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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

私は思わずそれを繰り返してしばらく開いた口が塞がらなかった。

女主人は顔で若奴の坐している長火鉢の横を示しながら、

「ようここへお園さんと二人で並んで私とこのとおりに話してはりましたがな、家でもお園さんとよう泊まりやはった」

彼女の語ることは向うではその心でなくても言々句々縦横無尽に私の肺腑を刺した。私は真実胸の痛みを撫でるようにしながら、

「そうですか。……しかし私には幾ら惚れていてもその女の抱えられている屋形まで押しかけてゆくのは何となく遠慮があって、それは出来なかったのです」私は自分の慎みをいくらか誇りかにいうと女主人はそんなことは無用のことだというように、

「ここの内お茶屋どすがな。何も遠慮することあらしまへん。おいでやしたらええのに」

私はその家が揚げ屋をかねていることは、その時女主人がいうまで気がつかなかった。それととうから知っていたならば何の遠慮をすることがあろう、それにしても女はどういう心で私にはそれを明かさなかったか。旧いことを思い出してみても最初行きつけのお茶屋から彼女を招ぶには並み大抵の骨折りではおいそれと来てくれなかった。それというのも今になっていろいろ思い合わすれば、やっぱりそういう深い男が始終ついているので滅多な客が自分の家へじかに来ることを好まなかったのかも知れぬ……それにしても