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にほんのみんしゅうと「にほんてきなるもの」

日本の民衆と「日本的なるもの」

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《日本の民衆と「日本的なるもの」(にほんのみんしゅうと「にほんてきなるもの」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,821 字 · 18 頁

青空文庫

或いはお前にはそう響かなくても、肝心な民衆自身にそう響けばいいではないか、と云うだろう。だがまたこういう形のお題目が実際に日本の民衆に受け容れられたのを見ない。

日本の民衆は初めから日本的なのだ、ただそれだけだ。夫はまだ民衆の社会階級的意義を抜きにした限りの「日本的なるもの」が受け容れられたということにはならぬ。だがそうは云っても必ずしも受け容れられないとは限っていない。なぜというに、日本の民衆は政治(民主主義的なものさえ)的訓練をまだあまり積んでいないので(之は他方今後の民主主義の多少の有効さを物語るわけでもあるが)、今日でもまだ民衆のもつべき対立意識をハッキリとは定着出来ずにいるからだ。そういう意味で日本民衆はまだ社会民衆としての自分自身を殆んど理解していない。この民衆の自意識を明らかにすることこそ、今後の日本の作家の自己意識の役割であり、作家の自我の機能であろう。作家が単に「日本的なるもの」として、民族的なものとして、伝統的なものとして、又血として、自己意識したのでは、この役割の遂行は覚束ない。作者が一人の民衆とならねばならぬ所以だ、それともそういう役割は公式的で御免だとでも云うのであるか。