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チチハルまで

日本プロレタリア文学集・20 「戦旗」「ナップ」作家集(七)

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《日本プロレタリア文学集・20 「戦旗」「ナップ」作家集(七)(チチハルまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,175 字 · 9 頁

青空文庫

それを見ると和田は何故とも知れず、ぞくッとした。

一度退却した馬占山の黒龍江軍は、再び逆襲を試みるために、弾薬や砲を整え、兵力を集中していた。ロシアは、それを後援している。

「支那人朝鮮人」共産軍がブラゴウェチェンスクから増援隊として出動した。そういう噂が、各中隊にもっぱらとなって来た。

「――相手は、支那兵だけではないんである。皆は、決して、油断をしてはいけない! いいか!」

鯖ヒゲの中隊長が注意を繰かえした。

前線から帰ってくる将校斥候はロシヤ人や、ロシアの大砲を見てきたような話をした。

「本当かしら?」

和田達多くの者は、麻酔にかかったように、半信半疑になった。

「ロシヤが、武器を供給したんだって? 黒龍江軍が抛って逃げた銃を見て見ろ。みんな三八式歩兵銃じゃないか!」

「うむ、そうだな!」

が、噂は、やはり無遠慮にはげしくまき散らされだした。

ある夕方、彼等が占領地から営舎に帰ると、慰問袋と一緒に、手紙が配られてあった。

「今年は、こちらだけでなく北海道も一帯にキキンという話だ、年貢をおさめて、あとにはワラも残らず……」和田はそれを読んでいた。と、そこへ伍長が、江原を呼びに来た。