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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,032 字 · 22 頁
「今日はお帰りに鹿島さまへお寄りなさるのですから、御下りのときこれをお召しあそばすのでございます」
「ああそうか」平三郎はにこっと笑う、「……あれは今日だったのか」
「お袴はいけませんですよ」八重は若い主人を見上げて戒めるような微笑をみせる、「……いつもとは違うのでございますからね」
そして膝ですり寄って、平三郎の袴の裾を揃え、軽くとんと下へ引き、襞を撫でてから、「さあ宜しゅうございます」といい、自分も礼服を抱えて立った。
父の新五兵衛は、もう先に出仕していた。母親と家扶に送られて家を出た平三郎は、小馬場の西をまわってゆきながら、「袴はいけない」と呟く。それから眼をあげて空を見る。よく晴れた冬の朝で高い高い碧空をなにかしらぬ鳥が渡っている、彼はゆっくりと御宝庫の向うにある自分の詰所へと歩いていった。
平三郎は、山瀬新五兵衛の一人息子である、父は川越藩秋元家の中老、彼は小姓組で書物番を勤めていた。父も挙措のしずかな温厚一方の人で、かつて怒ったり暴い声を立てたりしたことはないが、平三郎も同じように極めておっとりした気質をもっていた。唯一つ彼には放心癖があって、失敗というほどではないが時どき顔を赧くする場合がある。