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にっき

日記

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《日記(にっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 頁

青空文庫

西村氏と丸善で会い、星に行って、茶を飲んだ。自分は四時頃迄に帰る積りであったが、話はつきず、それ迄に帰るのは、全然不可能と判ると、逆に、夕飯に帰ってAと顔を会わせるのが、しみじみといやになった。二人きりで夕食をすませ、あと、知らん顔で、何とか云って糊塗出来る性分でないことは自分にも判って居る。父上を誘おうと思って事務所に電話をかけて見た。農商務省に集りがあり今晩は駄目とわかる。母上に会って置いて欲しいしするので、真直林町へ行くことにして、星を出たその時、西村氏は、Aには、自分と会ったことを云わないがよいと云う。

「病人には、病人を扱う心持が必要だ。真直にとるべきことを曲ってとる人には、誤解を招くようなことは云わない方がよろしい。」

然し、

「私は、意識して隠して置くようなことは出来ないわ。悪いことでもないのに」

笑って終ったが、自分には感が深いことであった。自分の正直さにも加減が加えられて居ることを思う。西村氏の方便も、世間の人間の大多数の陥る自尊心の欠乏から来る猜さと、何処かで通って居るような後味のわるさを感じる。

正直さと云うものが、天真爛漫の間に流露する場合をのぞいては、多く、よい意味の自尊心、対者に対する真の尊敬と云うものに係る為、大事に面して、二の足を踏ずに自己の真を顕し得るものは少い。