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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,172 字 · 36 頁
しかし、どうも、祖父の家業は、呉服御用という特種なので、もとより、問屋でもなし、店売りでもなく、注文品を、念入りにしつらえて納めるものであったようだ。反物を畳む、がっしりした小机とか、定木とか、模様ものの下絵を描いた、西の内紙で張って、絹さなだ紐をつけた、お召物たとう紙などが残っていたり、将軍さま御用の残り裂れで、人形の帯や巾着が出来ていたが――もっとも、明治十二年の大火に蔵だけ残して丸焼けになって、本所の回向院境内まで、両国橋を渡って逃げたということであるから、住居の具合は変りもしたであろうが、とにかく、五軒間口の塀は、杉の洗い出しであったし、門は檜の節無しを拭き込んで、くぐり戸になっていたし、玄関前までは御影石が敷きつめてあって、いつも水あとの青々して、庭は茶庭風で、石の井筒も古びていた。奥蔵の三階の棟木には、安政三年癸戌建之、長谷川卯兵衛安備と墨色鮮やかに大書してあった。
祖父は能書であって、神社の祭礼や、稲荷の登旗に、大書を頼まれることが度々あって、父は幼年から亀田鵬斎や、その他の書家たちから可愛がられ、六、七歳の時分から、絵のたちがよいというので師匠の国年や芳幾に、養子にくれと懇望されたということであった。