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やせがまんのせつ

明治十年丁丑公論・瘠我慢の説

福沢 諭吉

線上閱讀福沢 諭吉《明治十年丁丑公論・瘠我慢の説(やせがまんのせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,663 字 · 48 頁

青空文庫

ことなくして、その内実は禄を重んずるの種族が禄制を適宜にしたるが故に、諸藩に普通なる家禄平均の災を免がれたるなり。然りといえども常禄の外に所得の減じたるものもまた甚だ大なり。中津藩歳入の正味はおよそ米にして五万石余、このうち藩士の常禄として渡すものは二万石余に過ぎずして、残およそ三万石は藩主家族の私用と藩の公用に供するものなり。

この公用とは所謂公儀(幕府のことなり)の御勤、江戸藩邸の諸入費、藩債の利子、国邑にては武備城普請、在方の橋梁、堤防、貧民の救済手当、藩士文武の引立等、これなり。名は藩士の所得に関係なきがごとくなれどもその実は然らず。譬えば江戸汐留の藩邸を上屋舗と唱え、広さ一万坪余、周囲およそ五百間もあらん。類焼の跡にてその灰を掻き、仮に松板を以て高さ二間許りに五百間の外囲をなすに、天保時代の金にておよそ三千両なりという。この他、平日にても普請といい買物といい、また払物といい、経済の不始末は諸藩同様、枚挙に遑あらず。もとより江戸の町人職人の金儲なれども、その一部分は間接に藩中一般の賑たらざるを得ず。また国邑にて文武の引立といえば、藩士の面々は書籍も拝借、馬も鉄砲も拝借なり。