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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,950 字 · 85 頁

青空文庫

た。

「お前は大伴晴高ではあるまい」

十分間ぐらい静かに話しているうちに、宗久はモックと頭をもたげて、狂暴な目を光らせて、こう叫びはじめた。今にも刀を握って斬りかかりそうに見えるのである。

「これは異なことを言われる。よくこの顔を見なさるがよい。まさか私の顔を見忘れは致されまい」

「黙れ! 顔だけで信用はできぬ。貴様は須和康人であろう」

「顔だけで信用ができなくては、さて、さて、私もまことに困却いたすのう。それでは何をもって証明いたしたら納得なさるかの」

晴高にこう云われると、宗久もさすがに考えこみ、やがてひどい落胆が顔に黒々と表れて黙りこむこともあったし、時にはフッと何か考えついたらしく、やにわに鎌首をもたげて、

「ウヌ。刀で斬ってみれば、わかる。須和と久世と貴様と、三人、そこへ並べ。ハラワタを突き破って正体を見届けてやる」

いきなり起き上って刀をぬいて斬りかかってくる。こうして、晴高すらも刀で追いまわされてしまうのである。宗久の衰弱は甚しいし、根が生れつき虚弱のところへ、学問に凝って、ほとんど書斎を出たことがないから、いかにも身の動きがおそく、宗久に追いまくられても、アワヤの思いをみることは先ず女でもめったになかった。