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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 頁

青空文庫

その勘定も莫大であった。

父の時々の逆上的な大買いつけに、心ならずも動くのは川根の務めであった。それは彼の責任ではなかったから、久雄は彼を怒らなかったが、お茶屋で酔い痴れている父は家事向きのレンラクにくる川根を足蹴にして、階段から突き落したこともあった。そのために川根は手首を折り、全治に長い日数を要した。また、火箸でミケンを割られて、その傷跡がミミズのように残っていた。

父が故郷をひきはらい上京して店をひらくとき、土地の小さな織物屋の手代をしていた川根が見こまれて連れられてきたのである。そのときは、ゆくゆくはノレンをわけてやる、という話であったが、父は茶屋酒に浸り、店は久雄とその子飼いの若い者たちが切り廻しているから、川根は無用の存在で、ノレンをわけてもらえる見込みは全くなかった。もう四十に手のとどく川根は、店の近所の小さな借家で妻子五名と暮していたが、前途を思うと胸がつかえるばかりで、家へ戻っても殆ど妻子と口もきかなかった。

それは春がめぐりぎて桜の花がほころびそめた明るい朝のことであった。由利子はオイナリ様へ参拝した。

いつもは閉じられているオイナリ様の扉がひらいていた。