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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 頁

青空文庫

由利子にだけは優しい父だった。

お札のことを父にきかせてはいけないが、オーカミイナリは気にかかる謎であるから、訊かずにいられない。

「オーカミイナリって、賀美村のオイナリ様?」

由利子が相手なら、酔えば酔うほどキサクい父である。彼はクッタクもないらしい。

「オーカミイナリというのは邪教だよ。オレだけはその系図や古文書と称する物を見て知っているが、自分で拵えたニセモノさ。拵えてから六七十年はたっているかも知れんが、それを二千年も昔からの物だと言いふらしているのだよ。児玉郡と秩父郡の境界の山奥にある小さな祠さ」

「ウチと関係があるんですか」

「一寸だけ有ったが、今はない。庭のホコラはお母さんが造ったものだが、あれは折を見て焼きすてるとしよう」

「それはいけないわ。だって、私に毎朝晩お詣りするよう遺言なさったのですもの。お母さんはタタリを怖れてらしたのよ。そのタタリは、どういうわけなの?」

「どういうわけも有るものか」

真弓はライラクにカラカラと笑った。

「オーカミイナリは神様ではなく、気ちがいなのだ。山の中を狼のように走ることはできるが、東京の街の中で何ができるものか。