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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,951 字 · 51 頁
この黒蝶貝からは稀に黒色の真珠が現れることがあって、それは殆ど値に限りのない珍宝である。
今村は冷静な現実家で、夢想癖には無縁の男であったから、木曜島にいる時には真珠景気に眩惑されもしなかった。しかし今や世界に比類ない真珠貝の群生地帯へ自ら急ぎ行く身になっては、猛然として頭をもたげてくるものは、現実的な慾念であり、情熱であった。かの神秘なまでに端麗なアリアンの美女も彼の手にとどかぬ物ではなくなったのだ。
二人の若い女が船に乗りこむと聞いた時に畑中よりも不安を感じたのは彼であった。彼は乗船に先だって畑中を訪ねて、
「息綱持ちがその女に限るとなれば仕方がありませんが、その代り、料理方の大和を解雇して貰いたいものです。あの猛毒の深海鰻めが船内にトグロをまいている限り、女が乗り組んで、船に異変が起らぬということは有り得ません」
「自分もそれを考えないではないが、板子一枚下は地獄と云う通り、船乗りには身についた特別の感情があって、ともに航海するものは盟友であり、家族でもあるのです。女が乗りこむからと云って、その為に家族の一人を除くというのは情に於て忍び得ません。