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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,522 字 · 46 頁

青空文庫

すでに父母がないのを幸いに家財をもって穴をうめたが、こりるどころか益々熱をあげてひきつづいて、相当の穴をあけてしまった。そのとき万策窮して、実父の預金があることを知っているから、ミネに事情をあかして借財をたのんでもらった。

左近は自分の子供がどこで何をしているか、そんなことは気にかけたことがないから、幸平が銀行に勤めているときいたのもそれがはじめて。彼の預金がその銀行に一万七千円あると知って幸平が借財を申しこんだときいて、さすがに彼の目の色がちょッと動いたようであった。

三ヶ月ほどは彼はそれに何の返答も与えなかったが、ある日ミネをよんで、

「幸平に命じて、一万七千円の預金をおろして土曜の午後こゝへ来るように言うがよい。土曜の午後早いうちに来るのだよ」

と印鑑を渡した。

ミネは大そう喜んで幸平に知らせたから、生活の破局に瀕していた幸平の感激は話の外である。

一万七千円の現金をおろして宙をふむ思いで実父のもとを訪れたのである。

来てみると、すでに来客が二人いる。一人は常友である。料亭の小僧に出された常友は実直に板前をつとめて一人前の職人になっていたが、イナセな板前たちの中ではグズでノロマで、気立ては一本気で正直だが、腕と云い、頭の働きと云い仲間の中でパッとしない存在だった。