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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,522 字 · 46 頁

青空文庫

さてこの借金を兄に返済する段になると、月に十円の大金を支払っても六十五年もかかる。ソバ屋の出前持の給金は、住みこみ月額三円五十銭というから、月に五十銭か、せいぜい一円の支払い能力しかなく、実に元金の返済だけでも六百五十年を要するのである。

幸平はこの七千八百五十円をわが物としなければ、ついに法の裁きをうけて牢舎にこめられ、世間の相手にされなくなって暗い一生をいつも葬式のようにヒソヒソと歩いて送らなければならなくなる。是が非でも、これをわが物としなければならないのである。

骨肉を分けた実の兄弟がこの問題をめぐってどのような結果に相成るか、左近の興はつきるところがない。

さて一方、志道軒は命によって不足分を諸方の借金でようやく間に合わせた一万円をフトコロに、一子久吉をつれて到着する。本夕財産の分与をすると云い、一子久吉をつれて参れとあるから、志道軒こそは勘当をうけたとは云え、左近の嫡男である。よしんば自分の過去には香しからぬ歴史があっても、一子久吉はまぎれもない水野家の嫡流、当然家をつぐべきはこの子供だ。フトコロの一万円ぐらい返しても、その何倍、何十倍という財宝が本日ころがりこむだろう、と胸算用をしながら到着するに相違ない。