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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,645 字 · 47 頁
五兵衛の女房アツ子は大名華族の娘で二十七、後妻である。云うまでもなく、お梨江の実母ではない。実母はお梨江と兄の満太郎をのこして病死している。満太郎はケンブリッジ大学に学んで、今しも帰朝したばかりであった。今回の仮装舞踏会も表向きではないけれども、内々は満太郎の帰朝記念、一人前の日本紳士として彼を世におくりだすのが五兵衛の願いであり、よろこびであった。そういう家庭的な私事が、表向きではないとはいえ、実は眼目でもあるから、鹿鳴館は遠慮して、自邸を使用するのが穏当だろうと五兵衛も次第に考えたのである。
お梨江はその朝アツ子の部屋へよばれた。アツ子は朝寝で、午すぎて目をさまし、みんなと一しょに食事したこともないし、亭主五兵衛の御出勤を見送ったこともない。
「あなたは、今夜の舞踏会で、どんな仮装なさいますか」
お梨江は継母にこう問いつめられて、
「私、仮装なんか、しないわ」
「じゃア、マスクなさるのね」
「いいえ。マスクはきらい。舞踏会もきらいなのよ。だから、今夜はお友だちと乗馬のお稽古にでかけますのよ」
アラレもないことを云う。アツ子は大名の娘だから、威あって、猛く、たちまちお手打にするようにツンととんがって、鉛色の目玉に妖気がこもった。