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ほしじょろう
星女郎
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《星女郎(ほしじょろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,344 字 · 104 頁
峰も谷も、物凄い真夜中ですから、傍目も触らないで土間へ辷り込む。
ずッと遥な、門へ近い処に、一間、煤けた障子に灯が射す。
閨は……あすこだ。
難有い、としっとり、びしょ濡れに夜露の染んだ土間を、ぴたぴたと踏んで、もっとも向うの灯は届かぬ、手探りですよ。
やがて、その土間の広くなった処へ掛ると、朧気に、縁と障子が、こう、幻のように見えたも道理、外は七月十四日の夜の月。で、雨戸が外れたままです。
けれども峰を横倒しに戸口に挿込んだように、靄の蔓ったのが、頭を出して、四辺は一面に濛々として、霧の海を鴉が縫うように、処々、松杉の梢がぬっと顕れた。他は、幅も底も測知られぬ、山の中を、時々すっと火の筋が閃いて通る……角に松明を括った牛かと思う、稲妻ではない、甲虫が月を浴びて飛ぶのか、土地神が蝋燭点けて歩行くらしい。
見ても凄い、早やそこへ、と思って寝衣の襟を掻合せると、その目当の閨で、――確に女の――すすり泣きする声がしました。……ひそひそと泣いているんですね。」
三十一
「夜半に及んで、婦人の閨へ推参で、同じ憚るにしても、黙って寝ていれば呼べもするし、笑声なら与し易いが、泣いてる処じゃ、たとい何でも、迂濶に声も懸けられますまい。