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せいざ

星座

有島 武郎

線上閱讀有島 武郎《星座(せいざ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 頁

青空文庫

「星野、園はいたからそういっておいたぞ」

その声は玄関の方から叫ばれた。傍若無人に何か柿江と笑い合う声がしたと思うと、野心家西山と空想家柿江とはもつれあってもう往来に出ているらしかった。

清逸の心はこのささやかな攪拌の後に元どおり沈んでいった。一度聞耳を立てるために天井に向けた顔をまた障子の方に向けなおした。

十月の始めだ。けれども札幌では十分朝寒といっていい時節になった。清逸は綿の重い掛蒲団を頸の所にたくし上げて、軽い咳を二つ三つした。冷えきった空気が障子の所で少し暖まるのだろう、かの一匹の蝿はそこで静かに動いていた。黄色く光る障子を背景にして、黒子のように黒く点ぜられたその蝿は、六本の脚の微細な動きかたまでも清逸の眼に射しこんだ。一番前の両脚と、一番後ろの両脚とをかたみがわりに拝むようにすり合せて、それで頭を撫でたり、羽根をつくろったりする動作を根気よく続けては、何んの必要があってか、素早くその位置を二三寸ずつ上の方に移した。乾いたかすかな音が、そのたびごとに清逸の耳をかすめて、蝿の元いた位置に真白く光る像が残った。それが不思議にも清逸の注意を牽きつけたのだ。