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はるのとうぞく

春の盗賊

太宰 治

線上閱讀太宰 治《春の盗賊(はるのとうぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,212 字 · 58 頁

青空文庫

僕の負けさ。どうも、不言実行には、かなわない。」私は、しきりと味気なかった。

「金を出せ。」また、言った。

私は、声のほうへ、ふりむいて、

「ばか! いい加減にしろ! 僕は、ほんとうに怒るぞ。僕は、なんでも知っている。君みたいな奴と、あんまり、あと腐りの縁を持ちたくないから、僕は、さっきから、ばかみたいに、いい加減にとぼけていたのだ。僕は、すっかり知っている。君は、女だ。君は、きょうの夕方、その窓の外で、パリパリと低い音たてて傘をひらいた。あの、しのぶような音は、絶対に女性特有のものだ。男が傘をひらくときは、どんなに静かにひらいても、あんな音は、できないのだ。君は、夕方あらかじめ、僕の家の様子を、内偵しに来たのだ。それにちがいない。君は、僕の家のぐるりをも、細密に偵察した。お隣りの、あのよく吠える犬が、今夜に限って、ちっとも吠えないところを見れば、君は、ゆうべ、あの犬に毒饅頭を食わせてやったにちがいない。むごいことをする奴だ。僕は、ゆうべ、塀の上から覗きこんでいる君の顔を、ちゃんと見て知っている。忘れるものか。僕は、偉い絵かきだから、君の顔を、そのまま、いつでも画いて見せることができる。