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しゅんちゅう

春昼

太宰 治

線上閱讀太宰 治《春昼(しゅんちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 801 字 · 2 頁

青空文庫

」

「あたし、桜を見ていると、蛙の卵の、あのかたまりを思い出して、――」家内は、無風流である。

「それは、いけないね。くるしいだろうね。」

「ええ、とても。困ってしまうの。なるべく思い出さないようにしているのですけれど。いちど、でも、あの卵のかたまりを見ちゃったので、――離れないの。」

「僕は、食塩の山を思い出すのだが。」これも、あまり風流とは、言えない。

「蛙の卵よりは、いいのね。」妹が意見を述べる。「あたしは、真白い半紙を思い出す。だって、桜には、においがちっとも無いのだもの。」

においが有るか無いか、立ちどまって、ちょっと静かにしていたら、においより先に、あぶの羽音が聞えて来た。

蜜蜂の羽音かも知れない。

四月十一日の春昼。