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しゅんせつのでわじのみっか
春雪の出羽路の三日
喜田 貞吉
線上閱讀喜田 貞吉《春雪の出羽路の三日(しゅんせつのでわじのみっか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,521 字 · 33 頁
駅から江畑君のお宅まで約二十五町、生れて始めて箱雪車というもので送られた。否、乗ったことがないばかりでなく、見たこともまた始めてなのだ。雪の上ではとても人力車が利かぬので、俥屋さんも雪の間だけ雪車屋さんに早代りする。人一人をやっと坐らせるくらいの大きさの箱を橇に取りつけ、上に母衣をかけたもので、厚い座敷団を敷き、毛布で達磨さんのようにくるまって、火鉢でも抱えていれば、まず寒さ知らずという結構な交通具だ。それを乳母車を押すように後から押して行く。綱をつけて前から引く。雪の多い、ことにそれが氷っているようなころには、きわめて軽快に動くそうなが、しかし今は雪消時期なので、そうでもないらしい。
この冬はことに雪が多く、この仙北あたりでは、盛りには平地に八尺も積ったという。今でも三尺ばかりの厚さはある。その一面の雪野の中にも自然に通路が出来ている。表面は踏み固められておっても、下の方からだんだんと融けて来るので、慣れた足の俥屋さんでも折々足を深く踏み込む。小川や水溜りの所などには、ところどころ雪が陥没して、断崖が現われている。幅三、四尺の土橋の上に、二、三尺の厚さに積った雪が両側から崩れ落ちて、上面わずかに二尺足らずの梯形をなしている上を、俥屋さんは慣れた業とて巧みに引いて行く。