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しょうわじゅうごねんどのぶんがくようそう

昭和十五年度の文学様相

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《昭和十五年度の文学様相(しょうわじゅうごねんどのぶんがくようそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,846 字 · 6 頁

青空文庫

今年のしめくくりとして考察するなら、私たちは慎重に、この上下動と水平動との間にある角度の本質を見きわめなければならないのではあるまいか。

そこに或る開き、殆ど直角の開きが存在するということを視るだけでは不足と思う。二つの運動の間で揉まれひしゃげたのは外ならぬ文学であり、自分との真の統一で作品を生むことで動いて行こうとする作家の、年齢や経験にかかわらない歴史的な苦悩の原因もそこに潜められているのである。

日本の社会の歴史が世界史的な規模で変る時期に面している事実は誰の目にも明らかなことだが、文学はそれにつれてどんな新たな誕生をしなければならないかということになると、従来の作家の世界に現実を歴史からみる実力が欠けていた悲惨が大きく結果をみせて来た。新しい日本というものの目安からごく概念的に一方的に下される過去の文学への批判の性質を噛みわけて文学の問題として摂取成長してゆくより先、作家というものの文化的存在の可能不可能、ひいてはたつきの問題へ性急に迫って現れて、そこで作品とは切りはなれた作家の上下動が見られるということになった。

従ってその動きでは、雷の親のうつ太鼓を雷の子どもも自分の小太鼓でうちたたく姿があらわれ、文学の重く痛切な流れは左右の岸を洗いつつ自身の流れに沿うて流れざるを得ない形なのである。