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ときのかんねんとエントロピーならびにプロバビリティ

時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ(ときのかんねんとエントロピーならびにプロバビリティ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,111 字 · 9 頁

青空文庫

の進みが伴なうと仮定すれば、また一定の物理的エネルギーを与えられた時にその人の「時」の進み方はその人の感覚の鋭鈍によるものと仮定すれば、この場合の「温度」に相当するものは、すなわちその鋭鈍を計る尺度の読み取りに当たるものである。もっともこれはただ譬喩に過ぎない。物理学上の言葉の濫用かもしれぬ。しかしまじめな物理学上の事がらでエントロピーや温度の考えを拡張して行く余地は充分にあるように思われる。すなわちどこでも molekular ungeordnet の状態が入り込んで来る所には、これらの観念の幅をきかす余地がある。たとえば液体の運動でもいわゆる混乱運動(turbulent motion)を論ずる時にはオスボルン・レーノルズが行なったような特殊な取り扱いが必要になって来る。ここにも、エントロピーや温度の観念の拡張さるべき余地があるのではあるまいか。これに類した問題は液体の交流に関するものである。

現今物理学の研究問題は、分子、原子、エレクトロン、エネルギー素量となって、至るところに混乱系が跳梁している。プロバビリティの問題、エントロピーの時計の用途は存外に広いという事を思い出すに格好な時機ではあるまいか。