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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,663 字 · 97 頁

青空文庫

半七は引っ返して湯屋にはいって、念のために二階にあがって見ると、お吉の姿がいつの間にか消えていた。更に戸棚をあらためると、かの怪しい二つの箱も見えなかった。

「みんな持ち出してしまいやあがったな」

二階を降りて来て番台の男に訊くと、お吉はたった今階子を降りて奥へ行ったらしいと云うので、半七もつづいて奥へ行った。釜の下を焚いている三助の話によると、お吉はちょいとそこまで行って来ると云って、そそくさと表へ出て行ったとのことであった。

「なにか抱えていやしなかったか」

「さあ、知りましねえ」

山出しの三助はぼんやりしていて何も気がつかなかったのである。半七は思わず舌打ちした。自分達が飯を食いに行っている間に、丁度かの武士が来たので、お吉はかれと諜し合わせて、めいめいに秘密の箱を一つずつかかえて、裏と表から分かれ分かれに脱け出したに相違ない。一と足違いで飛んでもないどじを踏んだと、半七は自分の油断をくやんだ。

「こうと知ったら、いっそお吉の奴を引き揚げて置けばよかった」

彼はまた引っ返して、番台の男にお吉の家を訊いた。明神前の裏に住んでいると云うので、すぐにそこへ追ってゆくと、兄は仕事に出て留守であった。