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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

勿論それが同じ者の仕業か、あるいは別人か、まったく見当が付かないのであった。

二人は赤坂の方から行きむかったので、まず道順として青山下野守屋敷の辻番所に就いて、金右衛門一件の顛末を訊きただした。それから六道の辻にさしかかって、かの荒物屋の前に立った。ここの店さきで、真偽不明の怪しい仇討が行なわれたのである。

「おかみさん。きのうは飛んだ騒ぎだったね。さぞ驚いたろう」と、半七は云った。

「おどろきましたよ」と、店にいた三十前後の女房が答えた。「お侍さんが柿を買っていなさる処へ、又ひとりのお侍が来て、いきなりに斬ってしまったのです。かたき討だということでしたが、それが嘘だともいう噂で、どっちが本当ですかねえ」

「斬る方は何と声をかけたね」

「おのれ盗賊、見付けたぞと、大きい声で云いました」

「斬られた方はどんな返事をしたね」

「それがはっきり聞こえなかったのです。なんでも野口とか舌口とか云ったようでしたが……」

「野口とか舌口とか……」と、半七は口のうちで繰り返した。「それで、逃げるところを斬られたのだね」

「そうですよ」

斬った侍は、三十四五の浪人らしい男で、斬られた男も同じ年配の屋敷者らしい風俗であったと、女房は話した。