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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

「今度の木挽町には訥升が出ますよ。助高屋高助のせがれで以前は源平と云っていましたが、大阪から帰って来て、光秀の妹と矢口渡のお舟を勤めています。三、四年見ないうちに、すっかり大人びて、矢口のお舟なぞはなかなかよくしていました。いや、矢口と云えば、あの神霊矢口渡という芝居にあるようなことは勿論嘘でしょうが、矢口渡の船頭が足利方にたのまれて、渡し舟の底をくり抜いて、新田義興の主従を川へ沈めたというのは本当なんでしょうね」

「そりゃあ本当でしょう。太平記にも出ていますから……」

「子供の話にある、カチカチ山の狸の土舟というわけですね。その矢口渡に似たような事件があるんですが……。恐らく太平記か芝居から思い付いたんじゃないでしょうか」

「矢口渡に似たような事件……。それにはあなたもお係り合いになったんですか」

「かかり合いましたよ」

こうなると、芝居の方は二の次になって、わたしは袂に忍ばせている手帳をさぐり出すことになった。狡いと云えば狡いが、なんでも斯ういう機会を狙って、老人のむかし話を手繰り出さなければならないのである。それは相手の方でも万々察しているらしい。