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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

気のせいか、船は亡骸のように横たわっている。その船の中へ潜り込んで、半七は隅々までひと通りあらためると、果たして金八の云う通りであった。調べの役人らが出張った以上、これが判らない筈はない。おそらく事件を内分に済ませるために、浅井の屋敷から手をまわして、役人らをうまく抱き込んで、船底の破損ということに片付けてしまったのであろうと、半七は想像した。それは此の時代にしばしばある習いで、さのみ珍らしいとも思われなかったが、ここに一つの不審がある。事件を秘密に葬るつもりならば、浅井の奥さまや親類たちが町方へ手をまわして、事件の真相を突き留めてくれと云うのが理窟に合わない。一方に秘密主義を取りながら、一方には藪を叩いて蛇を出すようなことをするのはどういうわけかと、半七は又かんがえた。

或いは屋敷内や親類じゅうの議論が二つに分かれているのではないか。一方は家名を傷つけるのを憚って、何事も秘密に葬るがよいと云い、一方は飽くまでも其の正体を確かめて、その罪人を探し出すがよいと云う。要するに、何事もお家には換えられぬという弱気筋と、たとい家をほろぼしても屹と善悪邪正を糺せという強気筋とが二派に分かれて、こういう結果を生み出したのでは無いか。