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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

しかも女房は確かにその姿を見たと云うのである。それを聞いて、隣りの笊屋の女房も顔色を変えた。

「それじゃあ年さんの幽霊に違いない」

悪疫が流行して、そこにも此処にも死人の多い時節には、とかくに種々の怪談が生み出されるものである。笊屋では女房ばかりでなく、亭主の六兵衛もそれを信じて、コロリで死んだ年造の魂がそこらに迷っているのであろうと云った。その噂が表町まで伝わった時、年造とは壁ひとえの隣りに住んでいる煙草屋の大吉もこんなことを云い出した。

「実はわたしも年さんの姿を見た」

こうなると、幽霊の噂はいよいよ大きくなって、関口屋の長屋には年造の幽霊が毎晩あらわれるなどと、尾鰭を添えて吹聴する者もあった。さなきだに、コロリの噂におびえ切っている折柄、かむろ蛇や幽霊や、忌な噂がそれからそれへと続くので、ここらの町は一種の暗い空気に包まれてしまった。

取り分けて暗い空気のうちに閉じられているのは、関口屋の一家であった。娘は煩い付き、女房は半病人となっている上に、お由の後始末がまだ完全に解決しなかった。町内の五人組が関口屋と次右衛門との仲に立って、いろいろに和解を試みているのであるが、次右衛門は容易に折れない。