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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁
安政の大コロリ、文久の大麻疹、この二つが江戸末期における流行病の両大関で、実に江戸じゅうの人間をおびえさせました。これもその年の二月、長崎へ来た外国船からはやり出したもので、三月頃には京大坂に伝わり、それが東海道を越えて五、六月頃には江戸にはいって来ると、さあ大変、四年前の大コロリと負けず劣らずの大流行で、門並みにばたばた仆れるという始末、いや、まったく驚きました。
コロリはもちろん外国船のお土産です。麻疹は昔からあったんですが、今度の大流行はやはり外国船のおみやげです。そんなわけで、黒船は悪い病いをはやらせるという噂が立って、江戸の人間はいよいよ異人を嫌うようになりました。中には異人が魔法を使うの、狐を使うの、鼠を放すのと、まことしやかに云い觸らす者もある。麻疹は六月の末からますます激しくなって、七月の七夕も盂蘭盆もめちゃめちゃでした。なにしろ日本橋の上を通る葬礼の早桶が毎日二百も続いたというのですから、お察しください。
それでも達者で生きている者は、中元の礼を見合わせるわけにも行きません。わたくしの子分の多吉という奴が、七月十一日のゆう方に、本所の番場まで中元の砂糖袋をさげて行って、その帰りに両国の方へむかって大川端をぶらぶら歩いて来る。