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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

事面倒と見て、早くも姿を隠したらしい。面倒は彼ばかりでなく、半七も同様であった。折角尾けて来た為吉と藤助の二人を差し置いて、差しあたりはこの新らしい二人を詮議しなければならない事になったのである。彼は男と女をまねいて、榛の木の下まで連れてゆくと、庄太も他の二人も付いて来た。

「おめえ達はまったく駈け落ち者か」と、半七は二人に訊いた。「おれは御用聞きの半七だ。正直に云え」

御用聞きと名乗られて、二人はふるえた。抱えの遊女や芸妓を連れ出した場合、悪く間違えば拐引ということになる。かどわかしは重罪である。それが御用聞きに出逢ったのであるから、かれらが恐怖にとらわれたのも無理はなかった。それを察して、半七はしずかに云い聞かせた。

「いくら商売でも、おれも邪慳な事をしたくねえ。なんとか穏便に内済の法もあろうと云うものだ。なにしろ、おめえ達はどこの何という者だ」

かれらが恐るおそる申し立てるところによると、男は代々木の多聞院門前に住む経師屋のせがれ徳次郎、女は内藤新宿甲州屋の抱え女お若で、ままならぬ恋の果ては死神に誘われて、お若は勤め先をぬけ出した。二人はこの権田原の榛の木の下を死に場所と定めて、闇にまぎれて忍んで来ると、かれらよりもひと足先に来ている人があった。