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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

はっと思って透かして視ると、抜き身を引っさげた一人の男が芒をかき分けて一散に逃げ去った。それを追っても間に合わないと見て、半七はそこに突っ立っている藤助の腕をつかんだ。

「親分、わたしをどうするのです」と、藤助は慌てたように云った。

「どうするものか。さあ、白状しろ」

「わたしはなんにも知りません」

「空っとぼけるな。この野郎……」と、半七は叱り付けた。「貴様は今夜この為吉を殺らすつもりでここへ連れ出したのだろう」

「飛んでもねえことを……。わたしはただ、旦那の指図でこの為さんをここまで案内して来たのです」

「なんのために案内して来た」

「この大きい木の下に待っている人があるから、その人に逢わせてやれと云うのです」

「待っている人と云うのは誰だ」

「知りません。逢えば判ると云いました」

「子供のようなことを云うな。狐にでも化かされやしめえし、大の男二人が鼻をそろえて、訳もわからずに野原のまん中へうろうろ出て来る奴があるものか。出たらめもいい加減にしろ」

腕を捻じあげられて、藤助は意気地も無しに泣き叫んだ。

「堪忍して下さい、堪忍してください」

相手が案外に弱いので、半七はすこし躊躇した。