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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

きょうは朝から曇って、この二、三日のうちでも取り分けて涼しい日であった。千住の宿を通りぬけて、長い大橋を渡ってゆくと、荒川の秋の水が冷やかに流れていた。掃部宿へゆき着いて、丸屋という質屋をたずねると、すぐに知れた。質屋と云っても半分は農家で、相当の身上であるらしい。その裏手に二軒の家作があって、大工や左官などがはいっていた。

「もし、長さんは来ていますかえ」と、半七はそこにいる大工の小僧に訊いた。

「ええ、長さんはそこにいますよ」

小僧はあたりを見まわして、一人の若い男を指さして教えた。彼は二十三四の職人であるが、しるし半纒の仕事着も着ないで、唯の浴衣を着たままで、猫柳の下にぼんやりと突っ立って、他人の仕事を眺めていた。よく見ると、かれは右の手を白布で巻いていた。顔にも二三ヵ所カスリ疵があった。彼は何か喧嘩でもして、右の手を痛めた為に、きょうは仕事を休んでいるのであろうと察せられた。

「おまえさんは大工の長さんだね」と、半七は近よって声をかけた。

「ええ、そうです」と、長助は答えた。

「おととい私の内の松吉がおまえさんに逢って、浅草の話を聴いたそうだが……」