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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

小隊長の根井も心配して、なんとか早くその正体を見あらわしたいと焦っているのも無理はなかった。

「まったく困ったことでございます」と、半七も云った。「わたくし共の手に負えることだかどうだか判りませんが、まあ精々働いて見ましょう」

「では、長屋の内部をひと通り見てくれ」

根井は半七を案内して、第二小隊の長屋へ連れて行くと、今は調練の時刻であるので、小隊全部は練兵所へ出ていて、広い長屋に人の影は見えなかった。長屋には台所が付いていて、台所の外には新らしく掘られたらしい井戸があった。大きい炊事場は別の所にあって、歩兵が当番で炊事を受け持ち、それを各隊の長屋へ分配するので、ここの小さい台所はめいめいが水を飲んだり、顔を洗ったりする場所に過ぎないと、根井は説明した。

長屋の内は一棟を二つに仕切って、ふち無しの琉球畳を敷きつめ、板戸の戸棚にはめいめいの荷物が入れてあるらしかった。元来が一種の道場のような伽藍洞の建物であるから、別に半七の注意をひくようなものも見いだされなかった。彼はここを出て、さらに長屋の周囲を一巡した。

その当時の内神田はこんにちの姿とまったく相違して、神保町、猿楽町、小川町のあたりはすべて大小の武家屋敷で、町屋は一軒もなかったのである。