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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁
そういうわけで、その頃から種痘という言葉はあったんですが、一般には種痘と云わないで、植疱瘡と云っていました。さてその植疱瘡をする者がまことに少ない。牛の疱瘡を植えると牛になるという。これもあなた方のお笑いぐさですが、その頃にはまじめにそう云い触らす者が幾らもある。素人ばかりでなく、在来の漢方医のうちにも植疱瘡を信じないで、かれこれと難癖をつける者がある。それですから植疱瘡を嫌う者が多かったんです。外国でも最初のあいだは植疱瘡を信用しなかったと云いますから、どこの国でも同じことだと見えます。
そんなことを云っているうちに、例によってお話が自然と自分の畑へはいって行くんですが、それに就いてこんな事件がありましたよ。これなぞは江戸時代でなければ滅多に起こりそうもないことで、ほんとうのむかし話というのでしょうが、当世の方々にはかえってお珍らしいかも知れません。
文久二年正月の事と御承知ください。この年は春早々から風が吹きつづいて、とかくに火事沙汰の多いのに困りましたが、本郷湯島の天神の社殿改築が落成して、正月二十五日の御縁日から十六日間お開帳というので、参詣人がなかなか多い。