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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

彼は訴えるように云った。

「おい。なんとか返事をしてくれねえかよ。寂しくっていけねえ」

吉五郎は再びじろりと見返ったままで答えなかった。鉄造は彼自身も云う通り、きょうは全く酔わないのであろう、むしろ反対にその顔はいよいよ蒼ざめて来た。泣くように又訴えた。

「おい。おめえはなぜ黙っているんだよ」

「そりゃあこっちで云うことだ」と、吉五郎は初めて口を切った。「おめえはなぜ黙っているんだよ」

「黙っていやあしねえ。おめえが黙っているんだ」

「それじゃあ俺の訊くことを、なぜ云わねえ」と、吉五郎は鋭く睨み付けた。

「だって、なんにも知らねえんだ」と、鉄造は吃りながら云った。

「きっと知らねえか。知らなけりゃあ訊かねえまでのことだ。おれも黙っているから、おめえも黙っていろ」

「もう黙っちゃあいられねえ」

「それじゃあ云うか」

「云うよ、云うよ」と、鉄造は悲鳴に近い声をあげた。

「嘘をつくなよ」

「嘘はつかねえ。みんな云うよ」

「まあ、待て」

吉五郎は立って、階子の下をちょっと覗いたが、引っ返して来て再び鉄造とむかい合った。

「さあ、おれの方からは一々訊かねえ。おめえの知っているだけのことを残らず云ってしまえ」