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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

理右衛門はともあれ、自分はここの家になんのゆかりも無いのであるから、案内も無しにつかつかと踏み込むわけには行かない。迂闊に案内を求めたらば、相手にさとられて取り逃がす虞れが無いとも云えない。彼は桃の木の下に立って、どうしたものかと思案していると、内から五十前後の女が出て来て、若い侍を不安らしくじろじろと眺めていた。長三郎も黙っていると、やがて女は怪しむように声をかけた。

「あなたはどなたでございます」

なんと云っていいかと、長三郎はまた躊躇したが、思い切って訊き返した。

「今ここの家へ武家がはいったろうな」

「いいえ」

「このあいだから若い男と女が来ているだろうな」

「いいえ」

「誰も来ていないか」

「そんな方はどなたもお出でになりません」と、女は素気なく答えた。

「隠すな。私はその人たちに用があって、わざわざ音羽の方から尋ねて来たのだ」

この押し問答のうちに、入口にむかった肘掛け窓をほそ目にあけて、竹格子のあいだから表を覗いていたらしい一人の男が、大小をさして、草履を突っかけて、門口にその姿をあらわした。それが黒沼の幸之助であることを認めた時に、長三郎は尋ねる仇にめぐり逢ったように感じた。