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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
「黒沼の小父さんも年を取ったな」と、長三郎はその話を聴きながら、肚のなかで笑った。
ふだんはそんな怪談をあたまから蹴散らしていながら、いざとなれば心の迷いからそんな怪しみを見るのである。年を取ったと云っても、四十を越してまだ間もないのに、人間はそんなにも弱くなるものかなどとも考えた。
「そんなことは誰にも話さない方がいい。わたしも黙っているから」と、長三郎はお安に注意するように云った。
「ええ。誰にも云っちゃあならないと、御新造さまからも口止めされているんです」と、お安も云った。
口止めされながら、直ぐに他人にしゃべってしまうのである。長三郎は若い下女の口善悪ないのを憎みながらいい加減にあしらって家へはいった。そうして、朝飯を食ってしまってから、素知らぬ顔で隣りの家へ見舞にゆくと、お勝の容態はやはり好くないらしかった。
「姉さんは……」と、母のお富が訊いた。
「姉はもう好くなりまして、きょう一日も寝ていたらば起きられるでしょう」
「それは仕合わせでしたな。家の娘はまだこの通りで……」
「御心配ですね」
そんな挨拶をしているうちに、主人の黒沼伝兵衛が奥から出て来た。