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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

と、老人は又笑った。「石が流れりゃ木の葉が沈むと云うが、まあ、そんなお話ですよ。泥坊をつかまえる岡っ引が泥坊に追っかけられたのだからおかしい。泥坊が追っかける、岡っ引が逃げまわる。どう考えても、物が逆さまでしょう。そうなると、すべてのことが又いろいろに間違って来るものです。

その起こりは安政元年四月二十三日、夜の五ツ(午後八時)少し前の出来事で、日本橋伝馬町の牢内で科人同士が喧嘩をはじめて、大きい声で呶鳴るやら、殴り合いをするやら大騒ぎ。牢屋の鍵番の役人二人が駈けつけて、牢の外から鎮まれ鎮まれと声をかけたが、内ではなかなか鎮まらない。喧嘩はいよいよ大きくなって、この野郎生かしちゃあ置かねえぞと呶鳴る。もう捨てては置かれないので、牢内へはいって取り鎮めるために、役人たちが入口の大戸の錠をあけると、その途端に五、六人がばらばらと飛び出して来て、役人たちを不意に突き倒して逃げ去りました。

これは最初から仕組んだことで、破牢をするための馴れ合い喧嘩でした。さてはと気が付いて、役人たちが追っかけたが、もう遅い。どれも身の軽い奴らで、牢屋の塀を乗り越して、首尾よく逃げおおせてしまいました。