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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

その明くる朝は雨も止んだが、まだ降り足らないような空模様であるので、半七は邪魔になる雨傘を持って芝口へ出向いた。

三甚の家は江戸屋という絵草紙屋の横町の左側で、前には井戸がある。その格子をあけて案内を乞うと、内から若い子分が出て来た。こちらではその子分の顔を識らなかったが、相手は半七を見識っていて丁寧に挨拶した。

「三河町さんでございますか。まあ、どうぞこちらへ」

「親分は内かえ」

「へえ」と、子分はあいまいに答えた。

その応対の声を聞いて、またひとりの子分が出て来た。それは石松といって、半七の家へも二、三度は顔を見せた男であった。

「親分にちょいと逢いてえのだが……」と、半七はかさねて云った。

「へえ」と、石松もなんだかあいまいな返事をして、若い子分と顔をみあわせていた。

「留守かえ」

「へえ」

「どこへ出かけた。御用かえ」

「いいえ」

なにを訊いてもぬらりくらりとしているので、半七は入口に腰をおろした。

「おめえ達も知っているだろうが、先月の二十三日に牢抜けをした奴がある。その事について少し話してえのだが、親分が留守じゃあ仕様がねえ。いつごろ帰るか判らねえかね」