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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
と、半七は店に腰をかけた。「おかみさんは留守かえ」
「ええ、ちょっと出まして」
徳次は女中に指図して、火鉢や茶を運ばせた。托鉢僧が来かかって、ここの店さきで鉦をたたいて去るあいだ、半七らは黙って茶を飲んでいた。隣りの二階では昼間から端唄の声がきこえた。
「そこで早速だが、六間堀の伊勢屋はこの頃も出かけて来るかえ」と、半七は訊いた。
「お俊さんと時々に見えます。このあいだも、枯野見だと云って上手までお供をしましたが、いやどうも寒いことで……。枯野見なんて云うのは、今どき流行りませんね。雪見だって、だんだんに少なくなりましたよ」と、徳次は笑った。
「通人が少なくなったのだろう」と、半七も笑った。「おめえなら知っているだろうが、伊勢屋に贔屓の相撲があるかえ」
「ありますよ。万力甚五郎で……」
「万力甚五郎……。二段目だな。たいそう力があるそうだが……」
「力がありますね。まったくの万力で……。近いうちに幕へはいるでしょう」と、徳次は自分の贔屓相撲のように褒め立てた。「伊勢屋の旦那は万力にたいへん力を入れて、本場所は勿論ですが、深川で花相撲のある時なんぞも、毎日見物に出かけて大騒ぎ。