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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

これからのお話は安政六年七月以後の事と御承知ください。去年の安政五年は例の大コロリで、江戸じゅうは火の消えたような有様でしたから、ことしの夏は再びそんな事の無いようにと、誰も彼もびくびくしていると、六月の末頃からコロリのような病人が、又ぼつぼつとあらわれて来ました。もちろん去年ほどの大流行ではありませんが、吐くやら瀉すやらで死ぬ者が相当にあるので、世間がおだやかではありません。なにしろ去年の大コロリにおびえ切っているので、寄ればさわればその噂でした。又その最中に不思議な噂が立ちました。高源寺の縛られ地蔵が踊るという……」

「地蔵が踊る……」

「笑っちゃいけない。そこが古今の人情の相違です。地蔵が踊るといえば、あなたはすぐに笑うけれども、昔の人はまじめに不思議がったものです。たとい昔でも、料簡のある人達はあなたと同様に笑ったでしょうが、世間一般の町人職人はまじめに不思議がって、その噂がそれからそれへと広がりました。もとより石の地蔵さまですから、普通の人間のように、コリャコリャと手を叩いて踊り出すのじゃあない。右へ寄ったり、左へ寄ったり、前へ屈んだり、後へ反ったり、前後左右にがたがた揺れるのが、踊っているように見えると云うわけです。