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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

壺ぜんたいが桜んぼくらいの小さなものだから、うっかりすると、やりそこなう。気ながに、ゆっくりゆっくりやらなければいけない。

で、ファーブルは、やっとのことで、壺の横に四角な窓をあけたのだが、さて、そこからのぞいて見ると、壺の中には、どんな仕掛があったと思うね」

伯父さんは、そこでまた言葉を切って、いよいよ種明しをするんだぞ、といわぬばかりに、一太郎君の顔をごらんになるのでした。

「伯父さん、それ、どんな仕掛だったんですか」

一太郎君は、膝をのり出して、熱心にたずねました。

「窓に虫眼鏡をあててのぞいて見るとね、それはまだ母蜂が卵を生みつけて行ったばかりの壺だったが、その小さな水晶のようにすき通った卵が、どこにあったかというとね、おどろくじゃないか、壺の中の天井にぶら下っていたんだよ。

蜘蛛の巣のような細い糸に、卵がくっついてぶらさがっているのだ。だから、青虫どもがいくら身動きしたって、卵まではとどかないのだよ。卵はけっしておしつぶされる心配はないのだ。ファーブルは卵から幼虫が生まれ出るころを見はからって、又のぞいて見た。すると、かわいらしい幼虫は、やっぱりあの細い糸にぶら下って、頭を下にさかだちをして、壺の底にかさなり合っている青虫の一匹を、小さなくちばしで、つついていた。