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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

どうして、これでのぞくと、あの大きな月が、一ぺんに小さくなってしまうのでしょう」

ただ一枚の画用紙をまいた紙筒が、いよいよ魔法眼鏡のように思われてくるのでした。

「それがほんとうなのさ。出はじめの月も、高くのぼった月も、大きさはちっともちがわないのだ。目にうつっている大きさも、同じことなんだ。ただ、出はじめの月の方が、ひどく大きいような気がするだけなんだよ。

その証拠にはね、出はじめの月と、高くのぼった月を、写真にとってくらべてみると、少しも大きさがちがわないのだよ。写真は正直だからね」

「ほんとうですか。だって、あんなに大きく見えるじゃありませんか。ちょうどお茶碗とお盆ぐらいも、ちがうじゃありませんか」

一太郎君には、目にうつっている大きさが同じだなんて、どうにも信じられないのでした。

「大人が子供にとりかこまれていると、大人はたいへん大きく見えるだろう。ところが、その同じ大人の人を、相撲の横綱とならべて立たせて見ると、今度はひどく小さく見えるね。

月もそうなんだよ。広々とした空の真中にいる時には、まわりがあんまり広いものだから、月は小さく見える。ところが、出はじめの時は、建物の屋根だとか、森だとか、いろいろなものが近くにあるので、なんにもない空にある時よりも、大きく感じられるのだよ。