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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《暗黒星(あんこくせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 頁
誰もいる様子はない。部屋の右手に、埃のつもった頑丈な木製の階段が見える。明智は懐中電燈を消して、音を立てぬように注意しながら、その階段を登って行った。
円塔は三階造りになっていたので、同じような階段を二つ登らなければならなかった。第二の階段は、呼吸さえ殺すようにして、一寸ずつ一寸ずつ、虫の這うように這い上がって行った。そして、やっと階段の頂上にたどりつき、ソッと首を出して部屋の中を覗いてみた。
そこはただ一面の暗闇であった。光もなく音もなく、円塔全体が深い地の底の穴蔵ででもあるように感じられた。空気は土と黴との廃墟の匂いに満ちて、古沼のように淀んでいた。
冒険に慣れた明智探偵にも、こんな経験は珍しかった。そこには、暗さのほかに、何かえたいの知れぬ無気味なものがあった。この世のほかの幽鬼とか怨霊とかいうようなものが、闇の中の空気を重苦しくし、一種異様の匂いがただよっていた。
探偵は、背筋を虫が這うような悪寒を、じっと我慢しながら、闇の中を見つめていたが、やがて、眼が慣れるにつれて、窓の輪郭がほんのりと薄明かるく見分けられるようになった。そして、それと同時に、土と黴の匂いの中に、何かしらかすかな香気がただよっているのが感じられた。