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しょについて

書について

高村 光太郎

線上閱讀高村 光太郎《書について(しょについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,532 字 · 5 頁

青空文庫

すべてそういうものが基礎となってその上に美が成り立つ。そういうものを無視しては書が存在し得ない。書を究めるという事は造型意識を養うことであり、この世の造型美に眼を開くことである。書が真に分かれば、絵画も彫刻も建築も分かる筈であり、文章の構成、生活の機構にもおのずから通じて来ねばならない。書だけ分かって他のものは分からないというのは分かりかたが浅いに外なるまい。書がその人の人となりを語るということも、その人の人としての分かりかたが書に反映するからであろう。

顔真卿はまったくその書のように人生の造型機構に通達した偉人であり、晩年逆徒李希烈に殺されるのを予め知って、しかも従容として運命の迫るのを直視していた其の態度の美が彼の比類無い行草の藁書類に歴々と見られる。斯の如き書を書くものは正に斯の如き心眼ある人物である。後年の名筆であってしかも天真さに欠け、一点柔媚の色気とエゴイズムのかげとを持つ趙子昂の人物などと思い比べると尚更はっきり此事がわかる。書を学ぶのはすなわち造型美の最も端的なるものを学ぶ事であり、ただ字がうまくなる勉強だけでは決してない。お手本や師伝のままを無神経にくり返してただ手際よく毛孔の無いような字を書いているのが世上に滔々たる書匠である。