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しょきかん

書記官

川上 眉山

線上閱讀川上 眉山《書記官(しょきかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 頁

青空文庫

三好の家と辰弥とは、ようやく離るべからざるものとなれり。中に立って光代は独り打ち腹立ちぬ。見るほど何ゆえとも知らねどいよいよ疎ましき辰弥に、かくまで語らい寄る父の恨めしく、隔意を置かぬ母の口惜しく、心やすげなる姉の憎く、笑顔を見する兄の喰いつきてもやりたく、三方四方面白くなくて面白くなくて、果ては焦れ出す疳癪に、当り散らさるる仲働きの婢は途方に暮れて、何とせんかと泣き顔の浮世のさまはただ不思議なり。光代は一筋に綱雄を待ちぬ。他の気も知らず綱雄はいつまでも帰り来たらず。光代は一人物憂げに朝夕の雲を望めり。指して定まらぬ行衛に結ぼるる胸はいよいよ苦しく、今ごろはどこにどうしてかと、打ち向う鏡は窶れを見せて、それもいつしか太息に曇りぬ。

善平は見もやらず心もそぞろに、今日はまた珍客の入来とて、朝まだきの床の中より用意に急がしく、それ庭を掃けを出せ、銀穂屋付きの手炉に、一閑釣瓶の煙草盆、床には御自慢の探幽が、和歌の三夕これを見てくれの三幅対、銘も聞けがし宗甫作の花入れに、野山の錦の秋を見せて、あわれ心を筑紫潟、浪に千鳥の蒔絵盆には、鎌倉時代と伝えたる金溜塗りの重香合、碪手青磁の香炉に添えて、銀葉挾みの手の内に、霞を分けて入る柴舟の、行衛は煙の末にも知れと、しばしば心にうなずくなるべし。