輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あさのかぜ

朝の風

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《朝の風(あさのかぜ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 頁

青空文庫

ちらりと見える雪のいくらか煤煙によごれた色は、鼠色に乾いた都会へほんとの冬がもたらされたように珍しく懐しくて、サヨはその瞬間激しく生活のよろこびへの郷愁で胸をしめられるのであった。

ところがその年の暮ちかくなってから、歯入れやの店の様子がどことなく変って来た。世間一般に革草履だの本天の花緒だのが代用品になってゆく頃で、歯入れやの爺さんの店先は益々空っぽになって、がらん洞なガラス戸棚の奥に貼った緑色の模様紙の褪めたのがいきなりむき出しになった。それにもかかわらず客の体がやっと入るぐらいの店頭に何とはなしのうるおいが出来た。奥の方で紅い友禅の布が動いているのが往来から見えた。それをいじっているのは爺さんとはちがって大柄で目鼻のきつい歯入れやの神さんであった。半纏をひっかけた近隣のかみさんがその前に坐って頻りに何か布をいじりながら相談している。奥いっぱいにひろげられた裁ち板の前で歯入れやの神さんは、大柄で体に或る権威を湛えながら、対手をしている。爺さんが軒下に立って冬の陽向で腰をのしているときの顔にも微かに油気がついた。毎日毎日神さんは裁物板に向って坐っていて、これまで何をたべているのか分らなかったような店の奥に人間がものを食う賑いの気配も動いた。