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あさがおぞうし
朝顔草紙
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《朝顔草紙(あさがおぞうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,019 字 · 29 頁
文絵と姉妹のように育って来たという事を聞いて、信太郎には小雪が他人と思えぬ親しいものに感じられた。
「――文絵どのは、拙者のことを御存じだったでしょうか」
やや暫くして信太郎が訊くと、娘は韻の深い声で、然し細々と答えた。
「はい、存じあげて居りました」「…………」「従姉上さまは毎も、貴方さまのお噂をわたしに聞かせて下さいましたわ、殊に……ご病気になってからは」小雪の声は顫えた。
「……生きている内に一度お眼にかかりたい、ひと眼お会いしてから死にたいと、口癖のように申して居りました。貴方さまもお待ち遊ばしたでしょうけれど、従姉上さまも……ずいぶんお待ち申していましたわ」「有難う、よく云って下すった」
こみあげて来るものをじっと耐えながら、信太郎は心から云った。
「これで本望です、拙者を待っていて下すったという、それさえ分れば……本望です。未練者とお笑い下さるな、文絵どのとの約束を聞かされて十年このかた、現にも夢にも忘れることの出来なかった俤……今でも眼の裏に見えています。信太郎には、文絵どのの他に妻と呼ぶべき者はないのです、せめて是だけのことを云いたかった」