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あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび

朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅(あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,765 字 · 26 頁

青空文庫

今日も途中で釣った尺許の岩魚十数尾が火に炙られてある。野営するのも今夜限りであるから、殿下のお好みで、様々の御馳走が調えられ、御食事後も焚火を囲んで、遅くまでお話がはずんだ。

明くる二十五日は、暁かけて鳴く鶯、駒鳥、目細などの合唱で賑わった。午前七時に北沢の野営地を出発し、沢伝いに仙水峠に出で、駒津岳を経て駒ヶ岳の頂上に達したのは十一時であった。北沢の上流では黒木立の中で鷽が頻りに鳴いていた。いつか此処で鷹の捕えた懸巣を奪い取ったことを思い出す。快晴なので朝から日ざしが暑い。峠の上まで来ると林は尽きて、真黒な頽れ岩の堆積した斜面が右にも左にも現れる。峠から見上げた摩利支天の大岩壁には、殿下も「素晴らしい」と暫しお見とれになった。これから駒津岳の頂上へ懸けて偃松が深いので、元は登降に可なり困難であったが、今は多少の切明けもあるので稍登りよくなった。駒津岳には信州戸台から登った青年団二十余名が殿下をお待ち申していた。「わたしがどんな風をして山へ登るか見たいのだろう」と後でお笑いになる。駒ヶ岳の南面は、俗に六方石の称ある花崗岩の巨塊が錯峙し、雪が積っているように真白なので、白崩山の異名がある程だ。