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あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅(あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,765 字 · 26 頁
畔沢を経て小室の妙法寺にお着きになったのは七時半頃であったろう。此寺は小身延といわれている程あって、立派なものだ。徳栄山と号し、山門に喝道峰と大書した額が掲げてある。かねて御休息所に充てられ、茶菓の用意がしてあった。それに寺からのお願い出もあったので、暫く御くつろぎの上記念の落葉松をお手植えになって、八時十五分に御出発になる。
これから矢川の部落を過ぎ、出頂の茶屋まで高距九百米、登り一方である。熬りつけるような日を背に受けて、木蔭の少ない風も吹かぬ長い峠路を、喘ぎ喘ぎ登る暑さ苦しさ。汗は止め度なく流れて、皆茹ったような顔をしている。喉は渇くが水がない。矢川の部落まで行くと漸く谷川が流れていた。村では其水を飲料としているのであろう、他に井戸というものが見当らない。生温い水で好ましくはないが皆それを飲んで渇を医した。運悪く私は其れにあてられ、腸をいためて殆んど旅の終りまでそれが祟っていたのは、今思い出しても忌々しい。
殿下は矢川で馬をお下りになり、御快活に御談笑を交えさせられながら、御徒歩で御元気に急坂をお登りになった。早く頂上に着いて、涼しいところで休みたいと念じつつ、後れないように皆お跡から続く。