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きそおんたけのりょうめん

木曽御嶽の両面

吉江 喬松

線上閱讀吉江 喬松《木曽御嶽の両面(きそおんたけのりょうめん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,819 字 · 32 頁

青空文庫

おりてもおりても殆んど同じ垂直の径である。膝頭が痛くなり、眼も眩むように覚える。かような径を果して登る人があるだろうか、下り尽したら何処へ達するのだろう。水の音は何時までも同じ度合に聞えている。

二、三里も下ったかと思うと、ふと渓流の音が近くに聞えて、路が右に一廻転する。深い草が開けて丸木を渡した谿川へ出た。もう人里も遠くなかろうと思って、倒木へ腰掛けて休んでいると、遅れた同行の一人が漸く追い付いた、先きへ行った二人の影は見えない。

「ねえ君、先きの連中は道を間違えたのじゃなかろうか。」

「なーに大丈夫だ、間違いようもないから。」

「そうだね。」見合せた二人の顔は妙に蒼白かった。言葉も不思議に澄んでひびくし、話し合う気にもなれない。何だか、渓流のざわざわいうのが次第に高くなるようで、如何しても長く停止していられない所だ、また廻りくねって林中の径を走り出した。

今度は前に比べると一層高く水声が聞えて来る。もう濁川の湯へ近くなったのではあるまいか。水声は聞えても中々林は尽きない。路の急な事も依然として急だ。一時間位も走ったかと思うと、川の縁に沿うて藁屋根が一つ目に這入った。