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こがらしのさかぐらから
木枯の酒倉から
線上閱讀坂口 安吾《木枯の酒倉から(こがらしのさかぐらから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,163 字 · 22 頁
と叫ぶと俺は行者の頸を離れ、自分の頭を発止とかかえてガンガンとじだんだ踏んだが、あらゆる見当を見失ってわあっ! と一声うめえたまま――二十石の酒樽の周囲を木枯よりも尚速くくるくるくるくるとめぐり初めたのであった。余は煩悶の塊じゃよ、余の行く道は茨じゃよ、前も後も煩悶じゃよ、煩悶を忘れんとして煩悶――
わあっ!
と俺は跳ねあがって(ああ何十辺酒樽の周りをまわったか)バッタリと立ち竦んだまましばらくは外を吹く木枯の呻きに耳傾けていたのだが、猛然と心を決め、グワンと扉を蹴倒すと荒れ狂う木枯の闇へ舞うように踊りこんでしまったのだ。俺がただ一条に転げてゆく闇のうしろでは、今蹴倒した扉から酒倉へかけて津波のように木枯の吹き込んだ音をききながら、
――俺は断じて酒を止めたんだあ!
――もう一滴も呑まないんだあ!
――助けてくれえ!
と武蔵野を越え木枯をつんざいて叫びながら――辛うじて下宿の二階へ辿りつくと空しい机の木肌に縋りついて。
――く、苦しい! 助けてくれえ、喉がかわいた! 酒を呉れえ! 酒だ酒だ!
とかようにもがきながら、反吐を吐きくだしてしまったのだ。